トラックの荷待ち時間とは?なぜドライバーは何時間も待つのか

物流の素朴な疑問を調査

高速道路のサービスエリアや物流センターの周辺で、 何台もの大型トラックが停まっている光景を見たことはないでしょうか。

もちろん休憩している場合もありますが、その中には 荷物を積んだり降ろしたりする順番を待っているトラック もあります。

これが物流業界で長年問題になっている 「荷待ち時間」です。

「予約時間を決めて、その時間に行けばいいのでは?」 と思うかもしれません。

しかし実際の物流現場では、工場の生産スケジュール、荷物の準備、 倉庫の処理能力、トラックの到着集中など、さまざまな事情が絡んでいます。

今回は国土交通省・厚生労働省の公式データと、 実際のドライバー経験者の声をもとに、 「なぜトラックドライバーは何時間も待つのか?」 を調べてみました。

目次

そもそも「荷待ち時間」とは?

現在の物流効率化法では、荷待ち時間について明確な考え方が示されています。

簡単に言えば、トラックドライバーが集荷先や納品先に到着してから、 荷積み・荷卸しなどの作業を開始するまで待っている時間です。

荷待ち時間

作業が始まるまで待つ時間

例:9時に物流センターへ到着したものの、 荷卸し開始が11時なら、その間の2時間が荷待ち時間。

荷役時間

実際に物流作業を行う時間

荷物の積込み・荷卸し、検品、仕分け、 ラベル貼りなどを行う時間です。

国土交通省は、荷主や施設管理者などの都合によって 貨物の受け渡しを待機した時間を荷待ち時間として扱っています。

一方、ドライバーが業務から完全に離れて自由に休める時間は、 荷待ち時間とは別に考えられます。

ポイント: 「荷待ち」と「荷役」は似ていますが別物です。 荷待ちは待っている時間、 荷役は実際に作業している時間です。

最新データでは、荷待ちは平均「1時間」

では、実際にトラックドライバーはどのくらい待っているのでしょうか。

国土交通省が公表した2025年度調査では、 トラックドライバーの1運行あたり平均拘束時間は 10時間13分でした。

2025年度・1運行あたりの平均荷待ち時間 1時間00分 国土交通省「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査」

荷役時間は48分、附帯作業時間は14分で、 これらを合わせた 「荷待ち・荷役等時間」は2時間2分 となっています。

年度 荷待ち時間 荷役時間 荷待ち・荷役等時間
2020年度 1時間34分 1時間29分 3時間19分
2024年度 1時間28分 1時間34分 3時間18分
2025年度 1時間00分 48分 2時間02分
荷待ち・荷役等時間は大幅に短縮
2024年度 3時間18分
2025年度 2時間02分

2024年度から2025年度にかけて、 平均拘束時間は1時間33分短縮しました。

その大きな要因が、 荷待ち・荷役等時間の1時間16分の減少です。

一方、運転時間そのものは5時間54分から5時間52分と、 ほとんど変わっていません。

「走る時間」を削るのではなく、「走れない時間」を減らす 最近の物流現場では、 ドライバーの運転時間そのものを削るだけではなく、 荷待ちや荷役といった運転以外の時間を短くする方向 へ改善が進み始めています。

それでも「何時間も待つ」のはなぜ?

ここで疑問が出ます。

平均が1時間なら、 「4時間待った」「半日待った」という話は大げさなのでしょうか。

そうとも言い切れません。

過去の国土交通省・厚生労働省の調査では、 荷待ちが発生した運行のうち、 1時間を超えるケースが約半数を占めていました。

50.1% 荷待ち1時間超
17.7% 荷待ち2時間超
9.8% 荷待ち3時間以上

平均値だけを見ると「1~2時間程度」に見えても、 実際には短い荷待ちと極端に長い荷待ちが混在しています。

では、なぜそんなことが起こるのでしょうか。

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トラックが同じ時間に集中する

一つ目の理由は非常に単純です。

みんな同じ時間に来てしまうからです。

例えば荷卸しできるバースが3か所しかない物流センターに、 午前9時に10台のトラックが到着すれば、 当然ながら7台は順番を待つことになります。

1台の荷卸しに30分かかれば、 後ろのトラックほど待ち時間は長くなります。

ドライバー経験者の声|「通勤ラッシュと似ている」

Yahoo!知恵袋には、 トラックドライバーと倉庫でのフォークリフト作業の両方を経験したという回答者から、 各社のトラックが似た時間帯に積込みへ来るため、 長時間待ちが発生するという声が投稿されています。

朝に荷物を降ろし、帰り荷を積んで地元へ戻り、 さらに翌日分を積みに行く。

こうした運行の流れが各社で似ているため、 午後から夕方にトラックが集中しやすいという説明です。

質問者はこの状態を 「朝の通勤ラッシュと同じようなもの」 と表現しています。

Yahoo!知恵袋の投稿を見る

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荷物がまだ準備できていない

トラックが時間通りに到着していても、 運ぶ荷物そのものが準備できていない ケースがあります。

工場でまだ製品を作っている途中だったり、 ピッキングや梱包、検品が終わっていなかったりすれば、 トラックだけ先に着いても出発できません。

国土交通省の物流効率化に関する資料でも、 荷待ちの原因として、 積地での生産や荷揃えの遅れなどが指摘されています。

「在庫がなければ製造が終わるまで待つことも」

Yahoo!知恵袋の同じ回答では、 紙製品などの場合、在庫が不足していれば、 製造・梱包を行い必要数量がそろうまで トラックが待つケースもあるという現場の事情が紹介されています。

トラック側から見れば 「時間通りに来たのだから積んでほしい」。

工場側から見れば 「まだ製品が完成していない」。

ここに物流特有の難しさがあります。

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「早く並んだ者勝ち」がさらに渋滞を生む

荷卸しや積込みが予約制ではなく 先着順だった場合、 ドライバー側には当然、

「できるだけ早く行って並んでおこう」

という心理が働きます。

すると午前9時受付でも、 8時、7時30分、さらに早い時間から トラックが集まり始めることがあります。

待ちたくないから早く行く → 全員が早く行く → さらに待つ 先着順という仕組み自体が、 荷待ちを長くする原因になるケースもあります。

実際の声では「4時間」「12時間」というケースも

「帰り荷の都合で4時間くらい待つことがある」

Yahoo!知恵袋の投稿では、 帰り荷の都合によって出先の物流センターで 4時間程度待つことがある という回答も寄せられています。

また別の回答では、 過去に12時間待った末に積めず、 そのまま帰った経験があるという声も紹介されています。

Yahoo!知恵袋の回答者について本人確認はできないため、 全国のトラックドライバーに共通する統計として扱うことはできません。 ここではあくまで現場経験者による個人の体験談として紹介しています。

荷待ち中は「休憩」なの?

荷待ち問題で誤解されやすいのが、

「トラックで待っているなら休憩しているのでは?」

という点です。

厚生労働省は、 荷物の積込みが始まればすぐ対応しなければならないなど、 使用者の指示があればすぐ業務へ戻る必要があり、 労働から離れることが保障されていない 「手待ち時間」は労働時間になる と説明しています。

労働時間になる例

いつ呼ばれるか分からない

荷役開始の連絡が来たらすぐ対応しなければならず、 自由にその場を離れられない状態。

休憩になり得る例

完全に業務から解放されている

次の作業時間まで業務から完全に離れ、 自由に時間を使うことが保障されている状態。

「待っている=休憩」ではない 荷待ち中でもドライバーが自由に行動できない場合、 その時間は労働時間として扱われる可能性があります。

2024年問題で荷待ち時間がさらに重要になった

荷待ちは昔から物流業界に存在していました。

それが改めて大きな問題になった理由の一つが 「物流の2024年問題」です。

2024年4月から、 トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用されました。

つまり以前のように、

「荷主のところで3時間待ったから、その分3時間長く働けばいい」

という方法では、物流を維持することが難しくなっています。

ドライバーが働ける時間に上限がある以上、 荷待ちに3時間使えば、 その3時間分だけ 実際に荷物を運べる時間が失われる からです。

荷待ち時間=トラックが走れない時間 ドライバーの労働時間を単純に増やせなくなった現在、 荷待ち時間を減らすことは そのまま物流の輸送能力を確保することにつながります。

荷主側にも「荷待ち削減」が求められる時代へ

現在は、単なる「物流会社の努力」だけではなく、 荷主側にも物流効率化への対応が求められるようになっています。

物流効率化法では、 荷待ち時間や荷役等時間の短縮、 積載効率向上などへの取組が求められています。

国が示す目標 2時間以内 1運行あたりの荷待ち・荷役等時間

さらに、1回の受け渡しごとについては、 荷待ち・荷役等時間を1時間以内 とすることも目標として示されています。

この「2時間」「1時間」は、 1分超えただけで直ちに違法になるという単純な規制ではありません。 物流効率化に向けて国が設定している目標として理解する必要があります。

荷待ちはどうすれば減らせる?

国土交通省などが示している対策を見ると、 代表的なのは次のような方法です。

トラック予約受付システム トラックごとに時間を指定し、一斉到着を防ぐ。
混雑時間帯を避ける 納品時間を分散してバースの集中を防ぐ。
事前の荷揃え トラック到着前に貨物を準備しておく。
バース・荷捌きスペース確保 同時に処理できるトラック数を増やす。
パレット化 バラ積み・バラ降ろしを減らし、荷役を短縮する。
検品作業の効率化 デジタル化などで受付・検品時間を短くする。

アマノの業務改善記事でも、 バース予約管理システムやパレット化などが、 荷待ち・荷役時間を改善する方法として紹介されています。

ただし、システムを導入すれば自動的に解決するわけではありません。

予約枠を作っても、 実際の配送スケジュールと合っていなければ利用されません。

大切なのは「導入」ではなく「運用」 予約システムや物流DXは、 導入すること自体が目的ではありません。 実際にトラックの到着を分散させ、 荷待ち時間を短くできているかが重要です。

まとめ|荷待ち時間は「トラックが走れない時間」

今回の調査をまとめると
  • 荷待ち時間とは、荷積み・荷卸しが始まるまで待っている時間
  • 2025年度の平均荷待ち時間は1運行あたり約1時間
  • 平均は改善しているが、数時間単位の荷待ちが発生するケースもある
  • 主な原因はトラックの到着集中、荷揃えの遅れ、先着順など
  • 荷待ち中でも自由に行動できなければ労働時間になる場合がある
  • 2024年問題以降、荷待ち削減は物流能力を維持するうえでさらに重要になった

なぜトラックドライバーが何時間も待つのか。

原因を突き詰めると、 単に「倉庫の作業が遅い」という話ではありません。

工場の生産時間、荷揃え、トラックの到着集中、 先着順の受付、バース不足、作業員の配置など、 物流全体のスケジュールがうまくつながっていないことで 待ち時間が発生しています。

そしてドライバーにとって荷待ちは、

「休んでいる時間」ではなく、 「荷物を運びたくても運べない時間」 になるケースが少なくありません。

ドライバーが働ける時間に上限が設けられた現在、 物流を維持するために必要なのは、 単純にドライバーを増やすことだけではありません。

今いるドライバーの時間を無駄にしない物流へ変えていくこと。

それが今後の物流業界にとって、 より重要になっていきそうです。

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