トラックは1日に何km走る?長距離ドライバーの1日と2024年問題後の変化を調べてみた

物流の素朴な疑問を調査

高速道路を走っていると、全国各地のナンバーを付けた大型トラックを見かけます。

東京で北海道や九州ナンバーのトラックを見て、 「このトラック、いったい何km走ってきたんだろう?」 と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。

では実際、トラックドライバーは1日に何kmくらい走っているのでしょうか。 地場・中距離・長距離の違いに加え、物流の「2024年問題」で走れる距離や働き方がどう変化したのかまで調べました。

先に結論|1日100km台から700km超までかなり違う

「トラックドライバーは平均して1日○km走る」と一つの数字で表すのは難しく、 配送形態によって走行距離にはかなり大きな差があります。

1日の走行距離の大まかなイメージ
地場 100~300km 日帰り・近距離中心
中距離 300~500km 隣県~数県程度
長距離 500~700km+ 宿泊を伴うケースも
注意: 「地場・中距離・長距離」に全国統一の距離区分が存在するわけではありません。 上記は各種資料やドライバーの体験談をもとに整理した大まかな目安です。

2025年に現役トラックドライバー78人を対象として行われた民間調査では、 1日の走行距離は100~299kmという回答が中心でした。

一方、長距離輸送について紹介している運送会社の資料では、 1日500~1,000km程度、平均の目安として約700kmとされています。

つまり、同じ「トラックドライバー」でも仕事内容によって 1日に走る距離が数倍違うことがあります。

全国調査では「1運行平均297km」

少し古いデータですが、国土交通省などが2015年に実施した 「トラック輸送状況の実態調査」が参考になります。

この調査は全国1,252事業者、5,029人のドライバーを対象に実施されました。

1運行あたりの平均走行距離 297km 国土交通省等「トラック輸送状況の実態調査」

さらに、走行距離500km以下の短・中距離運行が全体の 85.1%を占めていました。

ここで重要なのは「1日」ではなく1運行という点です。 長距離輸送では、出発してから数日後に営業所へ戻るケースもあるため、 「1運行の走行距離」と「1日の走行距離」は同じではありません。

地場・中距離・長距離は何kmが相場?

では、地場・中距離・長距離を距離で分けると、どのくらいになるのでしょうか。

実は、 「地場は○km、中距離は○km、長距離は○km」 という業界共通の厳密な定義はありません。

区分 1日の走行距離のイメージ 主な特徴
地場 100~300km程度まで幅広い 日帰り・近隣エリア中心
中距離 300~500km前後 隣県~数県をまたぐ輸送
長距離 500~700km以上になることも 宿泊を伴う幹線輸送など

運送会社アイチ・ジェー・ブイでは、中距離ドライバーの1日の走行距離を平均約500km、 長距離ドライバーを平均約700kmの目安として紹介しています。

また、厚生労働省の改善基準告示では、一定の特例が適用される 「長距離貨物運送」について、1運行の走行距離450km以上という基準があります。

ざっくり言えば、450~500km前後が「長距離」の一つの境目 と考えることはできます。 ただし、実際のドライバーの負担を考える場合、距離だけを見るのは不十分です。

実は「何km走ったか」より拘束時間の方が重要?

例えば同じ300kmでも、高速道路を中心に300km走る仕事と、 市街地で何十か所も配送しながら300km走る仕事では負担がまったく違います。

トラックドライバーには運転以外にも、次のような仕事があります。

点呼・車両点検
荷主・物流拠点まで移動
荷待ち
積み込み・荷役
運転
休憩
納品先での荷待ち・荷下ろし

つまり、ドライバーが会社に拘束されている時間のすべてを 「走行」に使えるわけではありません。

現在の改善基準告示では、トラックドライバーの運転時間は 2日平均で1日9時間以内、 2週間平均で1週間44時間以内とされています。

また、連続運転時間は原則4時間以内です。

そのため、実務では 「あと何km走れるか」だけではなく、「あと何時間運転・拘束できるか」 が重要になります。

実際のドライバーの声|地場でも300km走ることがある

「地場だから走行距離が短い」とは限らない

Yahoo!知恵袋では、ドライバー経験者とみられる回答者から、 地場配送でも1日300km程度走るケースがあるという回答が投稿されています。

片道100kmの場所を往復するだけでも200kmになるため、 「地場=短距離」と単純には決められないという考え方です。

また、距離そのものより、営業所へ戻れるか、宿泊を伴うのかといった 拘束時間や運行形態で考える方が実態に近いという意見も紹介されています。

Yahoo!知恵袋の回答を見る

「700~800kmが現実的な上限感」という声も

走れる距離を左右するのは「運転以外の時間」

別のYahoo!知恵袋の投稿では、長距離ドライバーが1日に走れる距離について、 700~800km程度という感覚が紹介されています。

しかし、問題は単純な運転時間だけではありません。

荷主へ到着してから積み込みを待ち、積み込みを行い、 納品先でも順番を待って荷下ろしをする。 その間にも拘束時間は進んでいきます。

Yahoo!知恵袋の回答を見る

Yahoo!知恵袋は公的統計ではなく、回答者の本人確認もできません。 ここではあくまで個人の経験・現場の声として紹介しています。 また、投稿はいずれも2022年のため、回答内の労働時間ルールと現在の制度は異なる場合があります。

2024年問題でトラックが走れる距離は減った?

2024年4月から、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。

特別な事情がある場合でも、トラックドライバーの時間外労働は 年間960時間が上限です。

さらに改善基準告示も改正され、年間の拘束時間は 以前の3,516時間以内から原則3,300時間以内へ短縮されました。

2020年度 → 2024年度を比較

項目 2020年度 2024年度 変化
1運行の平均拘束時間 12時間26分 11時間46分 ▲40分
運転時間 6時間43分 5時間54分 ▲49分
荷待ち時間 1時間34分 1時間28分 ▲6分
荷役時間 1時間29分 1時間34分 +5分
特に大きく減ったのは「運転時間」
2020年度 6時間43分
→
2024年度 5時間54分

平均拘束時間は40分短縮しましたが、最大の変化は 運転時間が約50分減ったことでした。

一方、荷待ち時間と荷役時間を合わせると、 2020年度と2024年度で大幅には減っていません。

つまり2024年問題直後は、 「物流現場の無駄な時間を減らした」というより、 「ドライバーが実際に走る時間を減らして労働時間を合わせた」 という側面があったと考えられます。
なお、これは2020年度と2024年度の比較です。 2023年度と2024年度を直接比較した数字ではありません。

ところが2025年度には、別の変化が起きた

さらに国土交通省の2025年度調査を見ると、興味深い変化が確認できます。

2025年度・1運行あたり平均拘束時間 10時間13分 2024年度の11時間46分からさらに短縮

2024年度から比べると、平均拘束時間は 1時間33分短くなりました。

ところが、運転時間はほとんど変わっていません。

運転時間はほぼ横ばい
2024年度 5時間54分
→
2025年度 5時間52分

大きく減ったのは、荷待ち・荷役等の時間です。

荷待ち・荷役等時間
2024年度 3時間18分
→
2025年度 2時間02分

2024年問題への最初の対応では「ドライバーが走る時間を減らす」ことで 労働時間を抑えていた一方、その後は 荷待ちや荷役などの「走っていない時間」を減らす方向へ改善が進んだ と見ることができます。

長距離ドライバーの1日は「700km走る」だけではない

「長距離ドライバーは1日700km走る」と聞くと、 一日中高速道路を走り続けているように感じるかもしれません。

しかし実際には、次のような仕事があります。

出社 点呼・車両点検
荷主へ移動
荷待ち 積み込みの順番を待つ
積み込み・荷役
長距離走行 高速道路などを走行
休憩 連続運転時間にも注意
納品先へ到着 荷待ち・荷下ろし
次の運行または休息

トラックドライバーの仕事は、決して「運転」だけではありません。

だからこそ、トラックドライバーの働き方を見るときには、 「1日何km走ったか」だけでなく、 「その1kmを走るために何時間拘束されているのか」 まで見る必要があります。

まとめ|トラックは1日に何km走る?

今回の調査をまとめると
  • 地場では1日100~300km程度になるケースもある
  • 中距離では300~500km前後が一つの目安
  • 長距離では500~700km以上走るケースもある
  • 地場・中距離・長距離に全国統一の距離区分はない
  • 2020年度から2024年度にかけて運転時間は約50分減少
  • 2025年度は運転時間をほぼ維持したまま、荷待ち・荷役等時間が短縮

2024年問題以降、単純に「何km走れるか」だけではなく、 限られた拘束時間の中で、どれだけ効率よく運行できるか が以前にも増して重要になっています。

これからの物流で必要なのは、 「ドライバーにもっと長く走ってもらう」ことではなく、 「ドライバーが走れる時間を無駄にしないこと」 なのかもしれません。

目次