停車中のトラックはなぜエンジンを切らない?
SA・PAや物流施設で、停車中のトラックからエンジン音が聞こえることがあります。 不要なアイドリングは減らすべきですが、ドライバーの休息や荷物の温度管理など、エンジンを止めにくい事情もあります。
サービスエリアや物流施設の近くで、駐車中の大型トラックがエンジンをかけたまま停まっていることがあります。
「走っていないのになぜ止めないのか」「燃料がもったいない」「騒音や排気ガスが気になる」と感じる人もいるでしょう。
実際、不必要なアイドリングは削減すべきです。一方、トラックには乗用車とは異なる使われ方があり、ドライバーの安全や荷物の品質を守るため、停車中でもエンジンを止めにくい場面があります。
停車中のトラックがエンジンをかけている理由には、車内での休息、冷凍・冷蔵品の温度管理、DPFの再生、荷待ち中の待機などがあります。
ただし、すべてのアイドリングが業務上必要なわけではありません。車両の設備、気温、待機環境、荷物の種類によって必要性は異なります。
トラックが停車中もエンジンをかける主な理由
真夏や真冬にキャビン内で安全に休息するには、冷暖房が必要になる場合があります。
冷凍・冷蔵品では、停車中も冷凍機を作動させる必要があります。
車載クーラーや冷蔵庫などを長時間使うと、バッテリーへの負担が大きくなります。
DPFにたまったすすを燃焼させるため、停車状態で手動再生を行う場合があります。
呼び出しにすぐ対応する必要があり、キャビン内で長時間待機する場合があります。
理由1:ドライバーが安全に休息するため
長距離トラックには、運転席の後ろなどに寝台スペースが設けられている車両があります。ドライバーはSA・PAや待機場所で、次の運行に備えて休息や仮眠を取ります。
トラックのキャビンは金属やガラスに囲まれています。真夏には車内温度が大きく上昇し、冬には厳しく冷え込むため、エンジンを止めた状態では安全に休めない場合があります。
ただし、車載バッテリー式クーラー、エアヒーター、外部給電設備、冷暖房付き休憩室などが利用できれば、走行用エンジンを止められる場合があります。
理由2:冷凍・冷蔵品の温度を保つため
冷凍車や冷蔵車では、食品などを決められた温度帯で運ぶ必要があります。待機中に荷室温度が上がれば、品質劣化や廃棄につながる可能性があります。
ただし、冷凍車だから必ず走行用エンジンをかける必要があるとは限りません。冷凍機の方式によって、車両エンジンを止められるかどうかが異なります。
走行用エンジンの動力を利用して冷凍機を作動させます。方式によっては、車両エンジンを止めると冷却できません。
冷凍機専用のエンジンで作動します。走行用エンジンを止めても、荷室の冷却を続けられます。
バッテリーや施設側の電源を利用します。必要な設備があれば、走行用エンジンを止めた状態で冷却できます。
独立エンジン式では、車両の走行用エンジンを止めても、冷凍機専用エンジンの音が続きます。外から音を聞いただけでは、どの装置が動いているか判断できない場合があります。
理由3:電装品とバッテリーを管理するため
トラックでは、車載冷蔵庫、テレビ、業務端末、室内照明などの電装品が使用されます。車載クーラーや電子レンジなど、消費電力が大きい機器を長時間使用すれば、バッテリーが消耗し、翌日の始動に影響する可能性があります。
そのため、バッテリー残量を確保する目的でエンジンを作動させるケースがあります。
必要性は、機器の消費電力、使用時間、バッテリー容量、サブバッテリーの有無によって異なります。スマートフォンの充電や照明など、消費電力の小さい機器だけを理由に長時間アイドリングすることが、常に適切とは限りません。
サブバッテリーや外部給電設備を導入すれば、走行用エンジンを止めた状態でも電装品を使いやすくなります。
理由4:DPFのすすを燃焼させている
ディーゼルトラックには、排出ガス中の粒子状物質を捕集するDPFが装着されています。DPFにすすがたまると、高温で燃焼させて取り除く「再生」が必要になります。
多くの車両では、走行中など一定の条件が整った際に自動再生が行われます。しかし、短距離走行や低速走行が多いなどの理由で自動再生が完了しない場合、停車して手動再生を行うことがあります。
手動再生中はエンジン回転数が自動的に上がり、通常のアイドリングより音が大きくなる場合があります。
一般にはDPFと呼ばれますが、メーカーによって「DPD」「DPR」など異なる名称が使われています。基本的には、排出ガス中のすすを捕集・処理する装置です。
手動再生中は排気温度が高くなるため、排気口の近くに枯れ草、紙、油などの可燃物がないことを確認する必要があります。一般の人も、排気口付近へ不用意に近づかないよう注意してください。
「車両全体へ近づいてはいけない」という意味ではありません。車種ごとの取扱説明書に従い、ドライバーが再生状況を確認する必要があります。
理由5:荷待ち中に車両から離れられない
物流施設へ予約時間どおり到着しても、すぐに荷積みや荷降ろしを始められるとは限りません。前の車両の作業が終わらない、バースが空かない、荷物の準備ができていないなどの理由で、長時間待たされることがあります。
「呼ばれたらすぐ車両を動かしてください」と求められれば、ドライバーは車両から離れにくくなります。休憩室がない施設では、暑い日や寒い日もキャビン内で待機しなければなりません。
「エアブレーキだからエンジンを切れない」は本当?
大型トラックでは圧縮空気を使ったブレーキが採用されていますが、エアブレーキであることだけを理由に、停車中ずっとアイドリングが必要になるわけではありません。
大型車では、エンジンと連動するエアコンプレッサーが圧縮空気を作り、エアタンクへ蓄えます。エア圧が不足した状態では安全に走行できないため、出発前などにエンジンをかけ、規定圧まで充填する必要があります。
一方、正常な車両がエンジンを止めた瞬間に、ブレーキが効かなくなるわけではありません。
大型車の駐車ブレーキには、空気圧が失われた際にブレーキがかかる構造を採用した車両もあります。少なくとも、「エンジンを止めるとブレーキが解除され、すぐ動き出す」という理解は正しくありません。構造は車種によって異なります。
不必要なアイドリングが引き起こす問題
業務上エンジンを止めにくい場面がある一方で、すべてのアイドリングが必要なわけではありません。不必要に長時間続ければ、次の問題が生じます。
環境庁・環境省が過去に公表した資料では、10t積ディーゼルトラックのアイドリングによる燃料消費量は、10分間で約0.22~0.30リットルとされています。
この数値は古い資料に掲載された参考値であり、現在のすべての車両へ一律に当てはめることはできません。実際の燃料消費量は、車種、エンジン、気温、エアコン使用状況などによって異なります。
エンジンを止められる環境をつくるには
ドライバーに「エンジンを止めてください」と呼びかけるだけでは、根本的な解決になりません。エンジンを止めても安全に休息でき、業務に支障が出ない環境が必要です。
- 車載バッテリー式クーラー
- エアヒーター
- サブバッテリー
- 外部電源対応機器
- 独立式・電動式冷凍機
- キャビンの断熱性能向上
- 冷暖房付き休憩室
- 仮眠・シャワー設備
- トラック向け外部給電設備
- 荷待ち時間の短縮
- 予約・呼び出しシステム
- 十分な大型車駐車スペース
アイドリング削減には、ドライバーだけでなく、運送会社、荷主、物流施設、車両メーカー、道路管理者による設備整備が必要です。
一般の人はどう受け止めればよいのか
停車中のトラックからエンジン音が聞こえても、それだけでドライバーのマナーが悪いと決めつけるべきではありません。冷凍機、DPF再生、車内休息など、外からは分からない事情があります。
一方、近隣住宅や一般利用者にとって、長時間の騒音や排気ガスが負担になることも事実です。業務上の必要性があっても、周囲への影響がなくなるわけではありません。
トラックのアイドリングに関するよくある質問
DPFなどの手動再生によって、エンジン回転数が上がっている可能性があります。ただし、異常な煙や警告音がある場合は故障の可能性もあります。
一般の人が音だけで正確に見分けるのは困難です。独立式冷凍機では、走行用エンジンを止めても冷凍機専用エンジンの音が続きます。
ドライバーへ直接強く注意すると、トラブルになる可能性があります。SA・PA、店舗、物流施設などの管理者へ、車両の場所と時間帯を伝える方が安全です。
- 休息、温度管理、DPF再生、荷待ちなど、停車中もエンジンや関連装置を動かす理由がある
- 電装品やエアブレーキを理由に、すべての長時間アイドリングが正当化されるわけではない
- 不要なアイドリングを減らすには、車載機器、外部電源、休憩室、荷待ち削減などの設備整備が必要
