1. ガソリン減税で除外された軽油:背景と政策変更の対比
今年に入り高騰する燃料価格への対策として浮上したガソリン税の暫定税率廃止案は、当初ガソリンのみを対象とし軽油(ディーゼル燃料)は対象外とされました。政府・与党が「安定財源なき減税は無責任」と政府・与党が軽油の減税に慎重だったのは、軽油に課される軽油引取税が都道府県の貴重な歳入源であり、その減税が地方財政に直結する懸念があったためです。また軽油引取税の暫定税率分(1リットル当たり17.1円)は、運送事業者向けの補助制度である「運輸事業振興助成交付金」の財源にも充てられており、この仕組みを急に変えると物流システムに混乱を来すとの判断もありました。その結果、前回の競技では軽油が減税対象から外された形でした。

しかしこの措置は、市場価格の逆転という市場の価格の逆転を招きかねないとの指摘が相次ぎました。暫定税率廃止でガソリン価格が下がれば、軽油価格がガソリンを上回る可能性があったのです。本来ディーゼル燃料は安価であることが多く、燃費性能も相まって物流業界が多くの運送事業者がコスト面でのメリットを享受してきました。それが仮に「軽油の方が高い」状態になれば、業界にとって大きな打撃となります。実際8月時点の試算では、減税後ガソリンがリッター当たり約160円に下がる一方、補助金縮小で軽油は165円程度に上昇しうると報じられ、現場からは「軽油抜きの減税では意味がない」と憤る声も上がりました。こうした不公平感への批判が強まったことにより、ガソリン減税と軽油据え置きという当初の方針は持続困難となりました。
そして10月末、政策は大きく転換します。与党と主要野党6党の協議で、ガソリン税の暫定税率廃止に加えて軽油引取税の暫定税率についても廃止することで正式合意が成立しました。ガソリン税の25.1円分は年内(2025年12月31日)に、軽油引取税の17.1円分は新年度開始となる2026年4月1日付で撤廃されるスケジュールです。50年以上続いた燃料税の暫定税率をガソリン・軽油双方で取りやめるこの合意は、従来の方針から一転した異例の決定と言えます。当初除外されていた軽油も数か月遅れながら減税対象に含められることとなり、ガソリンと軽油の価格逆転リスクは回避されると見込まれています。
2. 軽油減税への転換を後押しした要因
軽油を含む減税へとかじを切った背景には、世論の高まりと物流業界の強い訴えがありました。ガソリンだけを安くする案には一般消費者からも「なぜ軽油は対象外なのか」という疑問や不満が噴出し、特に地方でディーゼル車を利用する人々や農業・漁業関係者などからも減税の恩恵を平等に受けられるよう求める声が上がっていました。燃料価格高騰で物価が押し上げられる中、「ガソリンも軽油も減税して生活コストを下げてほしい」という世論の後押しが日増しに強まった背景が要因として考えられます。
3. 減税がもたらす影響:物流業界・個人消費・物価・地方財政
今回の燃料税減税は、幅広い分野に波及効果を及ぼします。まず物流業界では、軽油価格の引き下げが直接的なコスト減となり、企業の収益圧迫が和らぐ見通しです。1リットル当たり17.1円の税負担減はトラックを多用する運送会社にとって年間数百万円規模の経費削減につながるケースもあり、運賃の値上げ圧力を緩和する効果が期待されます。燃料費の負担軽減は中小の運送事業者の事業継続にも寄与し、物流網全体の安定確保にプラスとなるでしょう。またバス・タクシー業界など公共交通機関にも恩恵が及び、コロナ禍後の経営立て直しを後押しする材料ともなります。
個人消費への影響も重要なポイントとなります。ガソリン税廃止によりレギュラーガソリン価格は理論上リッターあたり約25円の値下げ余地が生まれ、家計の燃料支出が減少します。自家用車を日常的に使う家庭では、試算では年間で7千円から1万円程度の負担軽減になるとの分析もあります。地方で生活必需品であるクルマの燃料代が下がれば、その分可処分所得が増えて消費活性化につながる可能性があります。加えて、燃料高騰によるドライバー離れやレジャー控えが和らぎ、ドライブや観光需要の下支えになるとの見方もあります。全体として、減税は家計に直接恩恵をもたらし、心理的な安心感から消費マインドを下支えする効果が期待されます。
一方で、燃料減税は物価全体にも間接的な波及を及ぼします。ガソリン・軽油ともに価格が下がることで、輸送コストや生産コストの抑制につながるからです。トラック輸送に依存する生鮮食品や生活必需品の物流コストが軽減されれば、商品の値上げ幅を圧縮し得るため、昨今問題となっている物価上昇ペースの鈍化が期待できます。実際、政府はガソリン減税によって消費者物価指数をわずかにでも押し下げ、インフレ緩和策を目的としています。ただし、減税分がどこまで最終価格に転嫁されるかは市場競争や企業努力にも左右されます。ガソリンスタンドや運送各社が減税メリットを適正に価格に反映すれば、消費者は幅広い商品・サービスで間接的な値下げ恩恵を享受できるでしょう。
地方財政への影響は今回の措置の中でも慎重な判断が求められる領域です。軽油引取税は都道府県税であり、その暫定税率廃止は地方に約5,000億円規模の税収減をもたらす見込みです。またガソリン税の一部である地方揮発油税も廃止されれば、合わせて地方への影響はさらに広がります。道路整備や維持管理に充てられてきた財源が目減りすることで、インフラ予算の逼迫や他の行政サービスへの波及が懸念されます。こうした事態に備え、政府は減税実施と同時に地方交付税の増額や特別交付金の創設などで自治体財政を下支えする方針です。実際、与野党合意文書にも「地方の減収を補う安定財源の確保」が明記され、減税後も地方が必要な財源を確保できるよう調整が行われる見通しです。それでもなお地方側からは「確固たる恒久財源が見えないままでは不安は拭えない」との声も上がっており、減税の恩恵と地方財政健全性のバランスをどう取るかが引き続き課題となります。
4. 税収減を補填する増税案・新たな財源策
燃料税の大幅減税により、国と地方を合わせ年間約1.5兆円もの税収減が見込まれています。この穴を埋める財源確保は無視できない課題です。政府・財務当局や各政党から様々な増収策が検討されています。現時点で正式決定した代替財源はなく、2025年末までに結論を出す方針とされていますが、議論に上っている主な案を以下に整理します。
- 走行距離課税(マイレージ税):燃料ではなく走行距離に応じて課税する方式です。将来的にEV(電気自動車)普及で燃料税収が減ることを見据えたアイデアで、ガソリン車・ディーゼル車だけでなくEVも含めたあらゆる車両から道路維持費を徴収できます。しかし地方在住者ほど移動距離が長く負担が重くなる不公平や、車両への走行距離計測装置の装着など技術的・運用上のハードルが高く、実現性には疑問符が付いています。都市部と地方の公平性確保やプライバシーの問題もあり、直ちに導入するのは困難との見方が強い状況です。

- 環境税・カーボン税の強化:燃料税を下げることは温室効果ガス排出量削減という観点では逆行するため、環境目的の新税導入で帳尻を合わせる案です。具体的には、石油や石炭に課されている地球温暖化対策税(炭素税)を増額したり、二酸化炭素排出量に応じた課金を強化することが議論されています。燃料の小売価格が下がる分、炭素排出コストを別途上乗せすることで脱炭素目標と財源確保を両立させようという試みですが、増税色が強まるため産業界の抵抗も予想されます。ただ長期的には国際的なカーボンプライシング(炭素への価格付け)の流れに沿って検討が進む可能性があります。
- EVへの課税検討:EV(電気自動車)の普及拡大に伴い、ガソリン税収の減少が加速すると見込まれるため、EVユーザーにも相応の負担を求める施策案です。例えばEVの電力充電に課税したり、車両重量税や自動車税を見直してEVが道路インフラ維持費を負担する仕組みを導入するといったアイデアが挙がっています。現行制度ではEVは燃料税を払わずに道路を利用できるため、「公平な税負担」の観点からも議論が避けられません。ただしEV普及期に過度な新税を課せば市場拡大に水を差す懸念もあり、環境政策との整合性を踏まえた慎重な制度設計が求められます。

- 金融所得課税の強化:ガソリン減税による税収減を補う財源として、富裕層の株式譲渡益や配当など金融利益への課税強化も有力視されています。いわゆる「貯蓄から投資へ」の流れの中で金融所得課税は優遇されてきましたが、高所得者ほど実質税負担率が低いとの指摘もあり、今回の減税財源として株取引のもうけに対する増税案が浮上しました。具体策としては、現在一律20%程度の金融所得課税を引き上げ累進性を持たせる案などが検討対象です。高所得者の低負担是正につながり得る一方、投資マインドを冷やす可能性もあるため、景気や市場への波及を見極めつつ議論される見通しです。
- 法人税優遇措置の見直し:政府内では、企業向けの租税特別措置(減税措置)を洗い直し、不要不急な減税措置を廃止して税収を捻出する方策も挙がっています。研究開発減税など一部の優遇策を縮小すれば数千億円規模の増収余地があるとの試算もあります。また財務省幹部からは「法人税率そのものを上げてはどうか」との声も取り沙汰されました。ただ、企業課税の強化は投資減速や国際競争力低下につながる懸念から経済界の反発が予想され、政治的ハードルは低くありません。与党内でも企業増税には慎重論が根強く、実際に踏み込めるかは不透明です。
- その他の財源案:このほか、一時的措置として今年度予算の剰余金や政府保有の基金を取り崩して穴埋めする案、将来的に消費税率引き上げなど広く薄く負担を求める可能性も取り沙汰されています。ただ、どの策を講じても「誰かの負担増につながる」のは避けられず、国民に新たな増税をお願いする場合は慎重な合意形成が必要です。政府は当面、国債増発による安易な穴埋めは行わない方針ですが、恒久財源が定まらない限り暫定的な財政対応に留まります。減税の恩恵と負担の配分について、今後も難しい舵取りが続くでしょう。
5. 今後の争点と制度設計上の課題
燃料税減税は多くの利点をもたらす一方、持続可能で公平な税制を再構築するための課題も浮き彫りにしています。まず公平性の確保が大きな争点です。自動車を利用する人としない人、ガソリン車ユーザーとEVユーザー、都市部の公共交通利用者と地方のマイカー依存層など、減税や新税の影響は立場によって差が生じます。例えば走行距離課税を導入すれば地方在住者に過度な負担が偏る恐れがあり、EVへの課税強化は環境対応を進める人々への逆インセンティブになりかねません。あらゆる政策オプションにメリット・デメリットが存在する中で、税負担の配分をいかに公平に保つかが制度設計上の難題となります。物流業界への支援と環境負荷低減、地方と都市のバランス、そして高所得者と一般層の負担割合など、多面的な公平性を同時に追求する必要があります。
次に税制の持続可能性という視点があります。ガソリン車から電動車へのシフトや省燃費化の進展により、従来型の燃料課税に依存した財源構造は先細りが避けられません。今回の暫定税率廃止は国民生活を下支えする効果がある一方、中長期的には新たな財源モデルへの移行を迫るものでもあります。エネルギー転換期にふさわしい課税のあり方、例えば炭素排出量に比例した課税や車両の利用状況に応じた課金など、持続可能で環境と整合する税制への転換が課題となります。また、燃料税減収による道路インフラ財源の不足を恒常的に補う仕組みも必要です。道路網維持は将来世代にも関わる問題だけに、安定的かつ将来のモビリティ変化にも耐えうる財源確保策を議論していく必要があるでしょう。
そして地方財源の代替策も避けて通れません。地方の自動車関連税収は地域の道路整備や公共交通支援に充てられてきただけに、その穴埋め策を講じないと地方格差が拡大しかねません。今後の議論では、暫定税率廃止後の都道府県財政をどう補完するかが焦点となります。選択肢としては、地方交付税交付金の増額や配分見直し、地方消費税や自動車税への上乗せなどが考えられますが、いずれも簡単には決まりません。自治体側は国の臨時措置ではなく恒久的な代替財源を求めており、国と地方の役割分担の再整理も含めた協議が不可欠です。地方創生や地域の足となる交通網維持の観点からも、地方が安心して財政運営できる仕組みづくりが課題となっています。
このように、ガソリン・軽油減税の実現はゴールではなく、新たな税制を構築するスタートでもあります。公平性を担保しつつ財源を確保し、なおかつ経済成長や環境目標とも両立するような制度設計という難しいパズルに取り組まなければなりません。与野党合意で減税そのものは実現しますが、肝心の財源論議は先送りされた格好であり、今後の税制改正議論の行方に国民の関心が集まっています。
6. おわりに:物流・消費者・自治体が共存できる税制を目指して
軽油を含む燃料税減税の実現は、生活者と産業界を下支えする異例の政策転換となりました。目先の負担軽減は物流業者やドライバーにとって歓迎すべき朗報でしょう。しかしその一方で、この減税措置を持続可能な税制の改革につなげていくことが次なる課題です。燃料税に依存しない新たな道路財源づくり、公平で効率的な課税の在り方、そして地域間・世代間の負担バランス――解決すべき問題は山積しています。
重要なのは、物流業界・消費者・地方自治体という三者が共存できる税制を模索することです。物流コストの低減と環境政策の調和、消費者負担の軽減と財政健全性の両立、地方自治体の自主財源確保と国の支援バランスなど、相反しがちな要素をどう調整するかが問われています。今回のような与野党超えた協力体制は、こうした困難な課題に取り組む上で大きな前進と言えるでしょう。減税の効果を最大化しつつ副作用を最小限に抑えるため、関係者の知恵を結集して持続可能な解決策を導き出すことが求められています。
50年ぶりとなる燃料税の見直しは、日本の税制の節目となる出来事です。今後の国会審議や税制調査会では、短期的な価格対策に留まらず中長期的視点に立った議論が期待されます。物流業界の声、消費者の暮らし、そして地方の自立を支える財源――そのすべてが調和する形で、新しい時代にふさわしい税制の姿が描かれることが理想です。減税という恩恵を社会全体で享受しつつ、そのコストを公平に負担し合う仕組みづくりに向けて、引き続き丁寧な議論と知恵の出し合いが求められていると言えるでしょう。
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