2025年6月29日18時ごろ、東名高速道路の足柄サービスエリア(上り線)を訪れ、試験導入中の「短時間限定駐車マス」の運用状況を現地で確認してきました。短時間限定駐車マスとは何か、その効果や現場で見えた課題について、レポートします。
短時間限定駐車マスとは?
トラックドライバーには4時間以上の連続運転をした場合30分以上の休憩を取らなければならない「4・30ルール」が定められており、高速道路会社各社はサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)の駐車マス不足解消に取り組んでいます。しかし長時間駐車する大型トラックが多いため、必要な休憩が取れずSA・PAを諦めて退出してしまうケースも問題となっていました。そこでNEXCO中日本は2023年11月より、東名高速 足柄SA(上り)の大型車駐車マスの一部(39台分)を60分以内の利用に限定する「短時間限定駐車マス」の実証実験を開始しました。大型トラックドライバーに確実な休憩機会を提供し、駐車マスの回転率を上げることが目的です。

短時間限定駐車マスの区画は、駐車場の一番奥(トイレ付近)に設けられており、地面には「60分以内」と時間制限を示す標示が描かれ、専用の案内看板も設置されて一目で区別できるようになっています。NEXCO中日本は短時間枠を利用するドライバーに対し、「駐車後60分以内にご出発いただきますようお願いします」と案内看板やポスター等で呼びかけています。60分を超えて駐車する場合は短時間限定枠以外の通常枠を利用するよう促されています。


足柄SA(上り)での運用状況

足柄SA(上り)では、短時間限定枠の導入によって大型車の回転率向上に一定の成果が出ています。2025年3月には画像認識技術を用いて各駐車枠の利用時間を判定し、休憩施設内のモニターに表示する取り組みも始まりました。これにより、ドライバー自身が現在の駐車経過時間を確認できるようになり、時間超過への意識付けが図られています。
足柄SA(上り)では短時間限定枠39台それぞれの駐車経過時間が電光掲示板(モニター)に表示され、リアルタイムで各車両の駐車時間が共有されています。このモニターを確認すると、目安である1時間を超過して表示されていた枠は約1つもない、そのため18:00時点ではすべての駐車枠の車両は60分以内に出発していることが分かりました。NEXCOの発表によると短時間枠の運用前後で比較しても、60分以内の利用台数が1日174台から306台に増加し、1枠あたりの利用回数(回転率)も1日3.3台から9.9台へと大幅に向上する効果が報告されています。一方で、わずかながら60分を超えて駐車し続けている車両も確認されており、こうした車両への周知・対策が引き続き課題です。
大型車マスに普通車が駐車する問題
現地で短時間枠の様子を観察する中で、別の問題も浮き彫りになりました。それは大型車用の駐車マスに一般の乗用車(普通車)が駐車してしまっているケースがあることです。実際、短時間限定枠のエリア内にも普通乗用車が停まっている場面が複数見られ、また短時間枠以外の通常大型車マスにも乗用車が紛れ込んでいるのを散見しました。大型車マスに普通車が1台でも停車していると、そのスペースには大型車は駐車できず、本来止められるはずのトラックが駐車できない状況が生じてしまいます。

私が駐車場内を見回した際も、一台の大型トラックが通路の中央付近で停車している場面に遭遇しました。不思議に思って周囲を確認すると、大型車スペースが一見1台分空いているものの、その枠には普通乗用車が1台占有していたのです。大型トラックの運転手は仕方なく車路上で一旦停止して様子を窺っていましたが、約20分後に再度確認すると、乗用車は依然その大型枠に留まったままで、大型トラックは駐車を諦めたのか他車の邪魔にならない端の位置に移動して休憩をとっていました。せっかく高速道路会社が大型トラックの休憩確保のために整備した駐車マスも、このように普通車に占有されていては十分に機能しないと痛感させられる出来事でした。
課題への対応策
短時間枠の設置だけでは解決できない「大型車マスに普通車が駐車してしまう」問題への対策も考えていく必要があります。考えられる対応策の例をいくつか挙げます。
- SA入口付近に誘導スタッフを常駐させ、普通車が誤って大型車エリアに進入・駐車しないよう案内する
- SA内を巡回する係員が大型車スペースを定期的に見回り、誤駐車を発見次第、注意喚起や移動誘導を行う
- 駐車場を上空から監視するドローンにモニターを搭載し、不適切な場所に駐車している車両へ画面表示やアナウンスで移動を促す
- 足柄SA(上り)のように駐車場内を一周できる環状のループ路がある場合、その存在を道路標識や案内板で周知し、空き枠を見つけられなかった車両が一旦退出せずに再度駐車枠を探せるようにする

まとめ
足柄SA(上り)で試験運用中の短時間限定駐車マスを現地確認したところ、制度自体は大型車の回転率向上に効果を発揮しているように感じました。多くのトラック運転手が60分以内の休憩で出発できており、深刻化するドライバーの拘束時間規制(いわゆる2024年問題)への対応策の一つとして有効でしょう。しかし、一方で大型車マスに普通車が駐車してしまう問題は依然として残っています。この課題を放置していては、本来休憩したいトラックドライバーが駐車できない事態が続き、短時間枠の整備効果も十分に発揮されません。高速道路会社には、短時間限定駐車マスの拡充と並行して、駐車マスの適正利用を徹底するためのさらなる取り組みが求められます。現場で休憩を取るドライバーの立場からも、マナーとルールを守った駐車への協力が改めて呼びかけられるべきだと感じました。