高速道路の深夜割引が見直される背景
2024年度末を目途に、高速道路の深夜割引制度が大きく変更されることが発表されました。この変更は、現行の割引制度が抱える課題を解消し、物流業界の労働環境を改善する目的で行われます。従来の深夜割引は、0時から4時までの間に高速道路を走行すれば、その前後の時間帯に走行した距離も含めて一律30%の割引が適用されていました。しかし、この制度にはいくつかの問題が指摘されており、特にトラックドライバーにとって大きな負担となっていました。

問題点と改悪と捉えられる部分
- 待機時間による渋滞と労働環境の悪化
現行制度では、割引を受けるために0時直前に高速道路の出口やサービスエリアで待機するトラックが多く見られました。この「深夜割引待ち」のために渋滞が発生し、ドライバーの労働時間が長時間化する原因となっていました。 - 新制度での割引適用範囲縮小
見直し後は、割引対象時間帯が22時から翌5時までに拡大される一方で、「その時間帯に走行した距離のみ」が割引対象となります。これにより、従来のように一部だけ深夜時間帯を走行しても全区間で割引を受けられるというメリットはなくなります。この変更は、多くの物流事業者にとって「改悪」と感じられる可能性があります。 - 後日還元型への変更
割引制度は「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」を利用した後日還元型へと変更されます。これにより、即時的なコスト削減効果が薄れ、事前登録など手続き面でも手間が増えることになります。
物流業界への影響この見直しは、特に長距離輸送を担うトラックドライバーや物流企業に大きな影響を与えます。以下は主な影響です。
- コスト増加:新しい割引制度では、深夜時間帯以外で走行する距離には割引が適用されないため、全体的なコストが増加する可能性があります。特に長距離輸送を行う企業では、この影響が顕著になるでしょう。
- 労働環境改善:一方で、この見直しによって「深夜割引待ち」のための無駄な待機時間が減少し、ドライバーの労働負担軽減につながることも期待されています。これにより、過酷な労働環境からくる人手不足問題にも一定の改善効果が期待されています。
新制度について詳しく
上限距離とは
深夜割引の対象距離には上限が設けられています。
車種ごとに、「1時間あたりの上限距離 × 利用時間」 から、休憩相当分を差し引いた距離が適用されます。
上限距離の計算例
大型車・特大車(乗合型自動車以外) 90km(1時間あたりの上限距離) × 7時間 - 52.5km(4時間超えの場合の30分休憩分) = 577.5km
軽自動車・普通車・中型車・乗合型自動車 105km(1時間あたりの上限距離) × 7時間(入口料金所~出口料金所の利用時間) - 52.5km(4時間超えの場合の30分休憩分) = 472.5km
割引方式の変更:「後日還元」へ
従来は即時割引でしたが、新制度では後日還元に変わります。
割引率(深夜割引30%)は維持されますが、受け取り方法が変わります。
新しい仕組み
- 深夜割引を受けるには、ETCマイレージサービスへの登録が必須。
- 料金所通過時は通常料金または休日割引料金が表示されます。
- 翌月の請求時に、深夜割引対象区間分が**30%引きの「深夜割引クーポン」**として還元されます。
※「後日還元」は実質的に割引クーポン方式と考えると分かりやすいです。
還元の具体例
深夜割引条件を満たす場合
翌月20日発送の請求時に、通常料金と深夜割引後の差額が還元されます。
深夜割引と休日割引の両方を満たす場合
休日割引料金と深夜割引料金との差額分が還元されます。
休日割引料金の方が安い場合
休日割引料金がそのまま請求されます(深夜割引は適用なし)。
還元された金額は翌月以降の高速道路料金から引かれます。

ETCコーポレートカードの場合(公式発表より)
ただし、休日割引料金の方が安い場合は、休日割引料金が請求されます。
深夜割引条件を満たす場合、翌月の請求書には最初から深夜割引後の金額が記載されます。
深夜割引と休日割引の両方を満たす場合は、休日割引ではなく深夜割引後の金額が適用。

料金シミュレーション
深夜割引見直し後の料金をこちらからシミュレーションいただけます。
見直し後の深夜割引概要
☆対象車種 (変更なし)
すべての車種
☆適用時間帯
毎日22時~翌5時 ※割引適用時間帯の走行分のみ割引
☆対象道路 (変更なし)
NEXCO東日本/中日本/西日本(NEXCO3社)が管理する全国の高速道路及び宮城県道路公社の仙台松島道路
宮城県道路公社の仙台松島道路における深夜割引見直しの実施については、現時点で未定です。
京葉道路・第三京浜道路・横浜新道・横浜横須賀道路は割引の対象外です。
☆割引率 最大30%割引

以下の路線は、一回の通行に対して料金を設定している道路・区間(均一料金制区間 等)であるため、料金所の通過時間が22時台の場合は全走行分を20%、23時から翌5時の間であれば全走行分を30%の割引率とします。
道央道(札幌南~札幌)・後志道・札樽道・ 道東道(池田~本別・足寄)*・東北道(川口JCT~浦和)*・山形道(湯殿山~鶴岡JCT)・日本海東北道(鶴岡JCT~酒田みなと)・東関東道(湾岸市川~湾岸習志野)*
*他の区間と連続して走行する場合を除きます。
☆適用方法
ETCマイレージサービスに登録されたETCカードまたはETCコーポレートカードを使用して、入口インターチェンジ及び出口インターチェンジを ETC 無線通信により走行してください。
<<参考>>長距離逓減制の拡充
深夜割引見直しとあわせて、長距離利用の通行料金負担増を軽減することを目的に、400㎞超の走行を対象に長距離逓減制*を拡充します。
*長距離逓減制とは、NEXCO3社が管理する高速道路のうち対距離料金を適用する高速自動車国道の利用にあたり、利用距離に応じて割引適用前の通常料金を逓減する制度です。

実際にシミュレーションしてみた
東京IC〜吹田IC 深夜割引 新旧制度比較(2025年8月時点)
1. 従来の制度(〜現在)
- 深夜0〜4時に出口通過で全区間30%割引
- 東京→吹田(468.5km、通常料金10,740円)
→ 割引後 7,520円(3,220円引き)
2. ETC深夜料金見直し後
- 適用時間拡大:22〜翌5時
- 割引対象は時間帯に該当する区間のみ(全区間ではない)
- 割引率は30%(22時台出口のみ約20%)
- 即時割引→翌月「後日還元方式」(ETCマイレージ登録必須)
- 上限距離あり(今回の468.5kmは上限内)
3. シミュレーション結果
ケース | 出口時刻 | 平日 還元額 | 平日 実質料金 | 休日 還元額 | 休日 実質料金 | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 23時以降 | 3,220円 | 7,520円 | 570円 | 7,520円 | 全区間ほぼ深夜時間内。休日は休日割との差額分のみ還元 |
2 | 22時台 | 480円 | 10,260円 | 0円 | 8,090円 | 22時台出口は20%割引&深夜時間帯区間が短い。休日は休日割の方が安く還元なし |
4. ポイントまとめ
- 平日深夜帯をフルで使えば、旧制度と同じ実質30%引き
- 22時台出口は割引率が下がり、恩恵が小さい
- 休日は休日割引が優先され、深夜割引は差額分だけ(または0円)
- 新制度ではその場で割引されず、翌月ポイント還元
詳しくは以下の記事を

今後の対策
物流業界としては、この新しい制度への対応策を早急に考える必要があります。以下は考えられる対策です。
1.運行計画の見直し
割引適用時間帯(22:00〜翌5:00)を最大限に活用できるよう、運行スケジュールやルートの再構築が求められます。
例えば、主要区間を深夜時間帯に走行するように積み込みや出発時間を調整すれば、割引率を最大化できます。
また、複数の配送ルートを比較して、割引対象区間を長く確保できる経路を選択することも有効です。
さらに、AIや配車管理システムを用いた動的な運行計画の最適化も、コスト削減に直結します。
2.ETCマイレージサービスへの登録促進
新制度の後日還元方式では、ETCマイレージサービスへの事前登録が必須です。
企業は以下のような対応が必要です:
- 全車両が確実に登録されているか定期的に点検
- 新規導入車両や外注車両にも登録を徹底
- ドライバーや配車担当者への制度説明会を実施し、誤認や未登録による割引漏れを防ぐ
これにより、深夜割引・休日割引の差額還元を確実に受け、無駄なコストを防止できます
3.長距離逓減制の活用
400km以上の走行には長距離逓減制が適用され、距離超過分の単価が安くなります。
長距離輸送を行う企業は、以下のような方法でさらに恩恵を受けられます:
- 発着地や経由地の見直しにより、1回の運行距離を400km以上に設定
- 帰り荷の確保による往復ロングラン運行で割引効率を高める
- 他社との共同輸送や積み合わせで、長距離便を増やす
これにより、新制度下でも総輸送コストを抑える戦略が立てられます。
まとめ
今回の高速道路深夜割引制度の見直しは、一部では「改悪」と捉えられるかもしれません。しかし、その背景にはドライバーの労働環境改善や渋滞解消という目的があります。物流業界としては、この新しい制度に迅速に対応し、効率的な運行計画やコスト削減策を講じることが求められます。
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