ドローン配送とは

ドローン配送とは、小型の無人飛行機(ドローン)を使って商品を届けるサービスです。主にマルチコプターと呼ばれる4つほどのプロペラが付いたヘリコプターのような形状のドローンが使用されます。GPSやセンサーを搭載しており、自動的に設定したルートを飛行できるため、人の手を介さずに配送が可能です。
物流の問題を解決する手段として期待され、すでに一部で導入されています。特に過疎地や離島など、これまで安定した配達が難しかった地域への物流改善に貢献すると期待されています。
ドローン配送の6つのメリット
1. 無人での配送が可能
ドローン配送の最大の特徴は、人の手を介さずに自動で配送できる点です。GPSやAI技術を活用し、事前にプログラムされたルートに沿って正確に飛行します。配送員の人手不足が深刻化する物流業界において、ドローンによる無人配送は大きな救世主となります。また、24時間365日稼働させることも技術的には可能で、人間の労働時間に縛られない柔軟な配送体制を構築できます。これにより、配送業務の効率化と人的リソースの最適配分が実現します。
2. 交通状況の影響を受けない
地上の交通渋滞や道路状況に左右されないのがドローン配送の大きな強みです。空を飛行するため、朝夕の通勤ラッシュや事故による交通麻痺、道路工事などの影響を一切受けません。また、信号待ちや迂回路の必要もなく、目的地まで最短距離で直線的に移動できます。これにより配送時間の正確な予測が可能となり、顧客に対して精度の高い到着時間の提示ができるようになります。特に都市部での配送において、この利点は非常に価値があります。
3. 配送コストの削減
ドローン配送は長期的に見て大幅なコスト削減を実現します。人件費の削減はもちろん、車両の購入・維持費、燃料費、駐車場代などの経費も不要になります。電気で動作するドローンは、ガソリン車に比べてランニングコストが低く、環境負荷も小さいのが特徴です。さらに、配送ルートの最適化により移動距離が短縮され、エネルギー効率が向上します。初期投資は必要ですが、運用が軌道に乗れば物流コストを大幅に削減できる可能性を秘めています。
4. 配送スピードの向上
ドローン配送は従来の地上配送に比べて圧倒的なスピードを誇ります。渋滞や信号待ちがなく、最短距離で目的地に向かうため、特に短~中距離の配送では大幅な時間短縮が可能です。一般的なドローンの飛行速度は時速30km前後で、都市部では地上配送の2~3倍の速さで配達できるケースもあります。この迅速性は特に緊急性の高い医薬品や書類の配送で真価を発揮し、「即日配送」から「即時配送」へのサービス革新をもたらす可能性があります。
5. 過疎地や離島など配達困難エリアへの配送が可能
従来の配送手段では採算が取れなかった過疎地や離島などの地域でも、ドローン配送なら効率的なサービス提供が可能になります。山間部や海を越える必要がある地域でも、直線距離で短時間に到達できるため、地理的障壁を克服できます。これにより、医薬品や生活必需品の安定供給が実現し、地域間の物流格差の解消に貢献します。特に高齢化が進む地方では、買い物難民問題の解決策としても期待されており、地域社会の持続可能性向上に寄与します。
6. 災害時の活用
災害発生時には道路が寸断されることが多く、従来の配送手段では被災地への物資輸送が困難になります。ドローン配送はこうした状況でも空からのアクセスが可能なため、救援物資や医薬品などの緊急物資を迅速に届けることができます。特に孤立した地域や急を要する医療品の配送において、その機動性は人命救助にも直結します。また、被災状況の空撮と組み合わせることで、効率的な救援活動の計画立案にも貢献できるため、災害対策の重要なツールとして期待されています。
ドローン配送の2つのデメリット
1. 破損や衝突のリスク
ドローン配送では、飛行中の操作ミスや突然の気象変化により、機体の破損や衝突事故が発生するリスクがあります。特に強風や雷雨などの悪天候下では墜落の危険性が高まり、地上の人や建物、車両などに被害を与える可能性があります。また、鳥や他の飛行物体との接触、電線などの障害物への衝突も懸念されます。こうした事故は配送物の損傷だけでなく、第三者への人身事故や物的損害を引き起こす恐れがあるため、安全対策の徹底や賠償責任保険への加入が不可欠となります。
2. バッテリー・重量に制限がある
ドローン配送の大きな課題として、バッテリー容量と積載重量の制限があります。現在の技術では、一回の充電で飛行できる距離は限られており、長距離配送には複数回の充電が必要となります。また、バッテリー自体が重いため、積載可能な荷物の重量も制限されます。一般的な配送用ドローンでは5kg程度が上限とされ、大型の荷物や複数の商品をまとめて配送することが困難です。これらの制限は、特に過疎地や離島への配送において大きな障壁となり、効率的な物流システムの構築を妨げる要因となっています。
ドローン配送の実用化が抱える課題
1. GPSの精度に左右される
ドローン配送の正確性はGPSの精度に大きく依存しています。現在のGPS技術では、場所によって数メートルの誤差が生じることがあり、これが配送の正確性を損なう原因となります。特に住宅密集地では、わずかな位置ずれが隣家への誤配達につながる可能性があります。また、高層ビル街や山間部ではGPS信号が弱まったり反射したりして精度が低下することも。さらに、悪天候時には位置情報の取得が不安定になるため、配送の信頼性が損なわれます。これらの課題を解決するには、RTK-GPSなどの高精度測位技術の導入が不可欠です。
2. 運行管理システム(UTM)の整備が不十分
ドローン配送の実用化には、複数のドローンを安全に運航管理するシステム(UTM)の整備が必須ですが、現状ではまだ不十分な状態です。UTMは空域の管理、飛行計画の承認、リアルタイムの位置追跡、緊急時の対応など多岐にわたる機能が求められます。しかし、標準化された国際規格の整備や各国の航空法との整合性、セキュリティ対策などが課題となっています。特に都市部での運用では、他のドローンや有人航空機との衝突回避、プライバシー保護などの問題も解決する必要があり、技術面だけでなく法整備も含めた包括的なシステム構築が急務となっています。
国内で進められているドローン配送の実証実験と事例
日本国内では、物流の効率化や地域課題の解決を目指して、様々な地域でドローン配送の実証実験が進められています。特に過疎地域でのラストワンマイル配送や都市部での新しい配送形態として注目されています。以下、代表的な事例をご紹介します。
1. 東京都港区竹芝でのフードデリバリー実証実験
2021年11月20日、東京都港区竹芝エリアにおいて、KDDIやJR東日本など5社による日本初となる有人地帯でのドローンによるフードデリバリーの実証実験が実施されました。
実験の概要
- 実施場所:ウォーターズ竹芝の施設内から同広場や浜離宮恩賜庭園の水上バス発着場
- 使用機体:ACSLの「ACSL-PF2」(防水・防塵機能付き、最大積載量2.75kg)
- 飛行距離:約700メートル
- 飛行速度:秒速10メートル
- 配送品目:アトレ竹芝の「スペシャルランチセット」とメズム東京の「スペシャルランチセットボックス」

この実験は「未来をイメージできるエンターテインメント型フードデリバリー」をコンセプトに、2022年度を目途に制度整備が予定されていた「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)」を見据えたものでした。
実際の配送では、ビルの4階から発進したドローンが約70mの距離を約2分間で飛行し、地上の着陸ポイントに到着。その後スタッフがランチボックスを参加者のテーブルまで届けるという流れで行われました。
参加者からは「結構揺れて、ぐちゃぐちゃになると思ったが、きれいにしっかり届いてびっくりした」「ドローンが運んできたと思うと格別なものがある」といった感想が寄せられました。
2. 山梨県北都留郡小菅村でのスマート物流実証実験
2020年11月、山梨県北都留郡小菅村は株式会社エアロネクストとドローン配送に関する連携協定を締結し、地域課題解決のための実証実験を開始しました。

実験の概要
- 目的:コンビニやスーパーがなく、食料品や薬がすぐに手に入らないという地域課題の解決
- 仕組み:「ドローンデポ」と「ドローンスタンド」を活用した新しい物流システム
- 配送品目:日用品、医薬品、フードデリバリー(ピザやお弁当)など
この実験では、村内に「ドローンデポ」と呼ばれる物流拠点を設置し、そこに様々な物流事業者の荷物を集約。そこから村内数カ所に設置された「ドローンスタンド」へドローンが荷物を配送し、利用者が受け取るという仕組みを構築しています。
また、ドローンデポは薬局としての機能も備え、村民が処方箋や市販薬を注文・受け取りができる仕組みも準備されています。さらに道の駅こすげなど村内事業者と連携し、ピザやお弁当の宅配も検討されています。
3. 長崎県松浦市鷹島での離島ドローン配送実験
長崎県松浦市の離島である鷹島を中心とした複数の離島を空で連結する実証実験も行われています。

新スマート物流におけるドローン配送で使用する 日本発物流専用ドローン ”AirTruck”
実験の概要
- 実施場所:松浦市鷹島から船唐津港、黒島港
- 飛行距離:道の駅鷹ら島から船唐津港まで片道約7.3km(飛行時間約16分)、道の駅鷹ら島から黒島港まで片道約5.8km(飛行時間約13分)
- 使用機体:エアロネクスト開発の物流専用ドローン「AirTruck」
- 目的:緊急物資、買い物サービス、フードデリバリーなど
この実験では、橋で陸続きの鷹島と内地を陸上配送で結び、鷹島島内をドローンとトラックでハイブリッド配送することで効率化を図り、さらに鷹島から隣の黒島へドローンで即時配送するルートを構築しています。
まとめ
ドローン配送は、無人配送による人手不足解消、交通状況に左右されない安定した配送時間、コスト削減、配送スピードの向上、過疎地や離島への配送可能性、災害時の活用など多くのメリットがあります。一方で、破損や衝突のリスク、バッテリーや積載重量の制限といったデメリットも存在します。
実用化に向けてはGPS精度の向上や運行管理システムの整備が課題となっていますが、日本各地で実証実験が進められており、将来的には物流の形を大きく変える可能性を秘めています。特に過疎地や離島など、これまで物流面で不利だった地域にとって、ドローン配送は地域格差を解消する重要な手段になると期待されています。