フォークリフトの労働災害　ヒューマンエラーを防ぐには何ができる？

現状

フォークリフトによる労働災害は依然として深刻な問題です。2023年には休業4日以上の死傷事故が1,989件発生し、死亡事故も年間30件近くに上ります。特に「墜落・転落」「挟まれ・巻き込まれ」「衝突」「転倒」といった事故が多発しています。また、小規模事業所（従業員50人未満）での死亡災害割合が高まっており、物流現場全体での安全対策が課題となっています。物流現場ではフォークリフトが不可欠な存在である一方、操作ミスや安全確認不足などによるヒューマンエラーが事故の主因となっています。
特に、運転経験が浅いオペレーターや、忙しい時期における確認不足が目立ちます。

フォークリフトの弱点

フォークリフトはその構造上、いくつかの弱点を抱えています。

1. 重心の不安定さ
   フォークリフトは重い荷物を運ぶため、重心が高くなりやすく、急旋回や過積載で簡単に転倒するリスクがあります。
2. 死角の多さ
   操縦席から見えづらい部分が多く、後退時や狭いスペースでの作業中に「巻き込まれ」や「衝突」事故が発生しやすいです。
3. ながら運転の強要
   物流現場では効率を求められるため、荷物を持ち上げながら移動する「ながら運転」が常態化しており、これが事故リスクを高めています。
4. 教育・技能不足
   フォークリフトは一見シンプルな操作性ですが、運転技術には熟練を要します。新人オペレーターによるバック時の確認不足や操作ミスが頻発しています。
5. 安全装置・環境整備の不十分さ
   多くの現場では、安全装置の導入や作業環境整備が遅れており、人間の注意力だけに頼る状況が続いています。

克服方法

フォークリフト事故を減らすためには、人間の努力だけでなく、環境整備や技術導入を含む総合的な対策が必要です。

1. 作業環境の改善

• 作業エリアと歩行エリアの分離
  フォークリフト専用通路と作業員用通路を明確に区分し、接触事故を防ぐ。
• 速度制限と段差設置
  倉庫内での速度制限（10km/h以下）や段差設置によって、安全運転を促進する。

2. 技術導入

• 安全装置の活用
  死角を補うカメラやセンサー、AI検知装置を導入することで、人間の注意力だけでは防ぎきれないリスクを軽減する。
• 稼働管理システム
  フォークリフトの稼働状況を可視化し、危険運転や不適切操作をデータで分析して改善する。

3. 教育と訓練

• 体系的な教育プログラム
  新人オペレーターへの基礎教育だけでなく、定期的な技術研修を実施する。
• シミュレーション訓練
  仮想環境で危険操作を体験させ、安全意識を高める。

4. 第三者機関による評価制度

• 労働安全衛生総合研究所が提案するように、第三者機関による稼働環境評価制度を導入し、安全性向上への指標とすることも有効です。

まとめ

フォークリフト事故は、その構造的な弱点と物流現場特有の効率重視文化から完全になくすことは難しいですが、技術革新と作業環境整備によってリスクを大幅に低減できます。特に、安全装置や稼働管理システムなど最新技術の導入は、人間の限界を補う重要な手段です。また、第三者視点による評価制度も含めた包括的な対策が求められています。これらを着実に実施することで、安全かつ効率的な物流現場を実現できるでしょう。