高市内閣の燃料価格対策と物流業界支援策をコンサルタントが読み解く

2025年10月に発足した高市内閣は、物価高騰への緊急対応策の1つとして、燃料価格の抑制に関する支援策を掲げました。本記事では、中立的な報道や政府資料をもとに、高市内閣が取り組むガソリン・軽油の暫定税率廃止(減税)と、物流業界の課題とされる「2024年問題」への対応策について整理します。燃料高騰への減税措置の背景や各政党の立場、そしてドライバーの時間外労働規制について物流業界支援策の具体例とその効果について、現場の声も交えながら中立的に解説します。

目次

燃料価格高騰への対策:ガソリン・軽油の暫定税率撤廃

まず、高市内閣が最優先課題と位置づけたのがガソリン価格・軽油の高騰対策です。高市首相は就任直後の記者会見で「国民生活に直結する物価高への対応が最優先」と述べ、中でもガソリン税の暫定税率廃止に強い意欲を示しました。ガソリン税の暫定税率とは、1974年の道路財源不足を補うために導入された1リットル当たり25.1円の上乗せ課税で、道路目的税が廃止された2009年以降も「旧暫定税率」として残っていたものです。高市内閣はこの長年続いた上乗せ課税を撤廃し、ガソリン価格そのものを直接引き下げる方針を打ち出しました。高市首相自身、就任直後のNHK番組で「この臨時国会で暫定税率廃止法案を通さねばならない」と表明し、早期実現への決意を述べています。

実際、高市内閣発足後、与野党間の協議も急速に進みました。10月末には自民党と主要野党計6党の実務者協議で、ガソリン税暫定税率を2025年12月31日付で廃止することで合意が成立しました。この合意では、軽油にかかる地方税の軽油引取税暫定税率(1リットル当たり17.1円)についても2026年4月1日廃止とし、段階的な移行措置を取ることが確認されています。具体的には、2025年11月中旬以降2週間ごとに燃料補助金を5円ずつ増額し、年末までにガソリン25.1円・軽油17.1円相当の価格引き下げを実現した上で税率を撤廃する計画です。これにより急激な財源減少による混乱を避けつつ、年末時点で給油所の価格表示から事実上「暫定税率分」が消える見通しです。

各党の立場と合意形成の背景

ガソリン税の暫定税率廃止は、与野党間でおおむね方向性が一致した政策ですが、実現までのスケジュールや財源措置を巡り各党の間で調整が行われました。もともと野党側が中心となって早期廃止を強く求め、2025年6月には立憲民主党・国民民主党など野党7党で暫定税率廃止法案を提出していました。参院選でもガソリン税減税は争点となり、高市内閣発足直後の与野党協議で年内廃止の方向が確認されたものの、一時は政権交代に伴う政治空白で実施時期が翌年2月までずれ込む案も取り沙汰されました。これに対し、「与野党合意の年内実施の約束を守るべきだ」「軽油の減税もガソリンとセットで行うべきだ」と野党から強い要望が上がり、最終的に先述の通りガソリンは年内、軽油も数ヶ月遅れで廃止することに落ち着いた経緯があります。自民党内でも当初は地方財源への影響を懸念する声がありましたが、「安定財源の確保策も含め合意した」(木原官房長官)とされ、租税特別措置の見直しや金融所得課税強化などによる代替財源で調整する方針が示されています。公明党も地方税収減への対策を条件に減税に同意し、日本維新の会や共産党も含め超党派で暫定税率撤廃に道筋がついた点は、50年ぶりの大胆な税制転換として注目されています。

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現場への効果と残る課題

ガソリン・軽油の暫定税率廃止は、物流業界をはじめ幅広い業種に直接的なコスト軽減効果をもたらします。トラック輸送は軽油を大量に消費するため、1リットル17.1円の軽油引取税減税は燃料費高騰に苦しむ運送会社には朗報です。実際、鉄鋼や建材輸送を手掛けるある運送会社からは「燃油費の高騰が運送業の経営を直撃している。軽油の税率引き下げを一刻も早く進めてほしい」との切実な声が上がっています。燃料費負担の軽減に加え、「緑ナンバー(営業用)トラックに対する高速道路料金の優遇措置なども検討し、日本の産業を支える物流の負荷軽減を図ってほしい」という要望も出ています。他方で、税収減に伴う財政への影響や、補助金で一時的に価格を下げる手法の是非については議論が残ります。補助金頼みの価格抑制策は将来的な財源確保が課題となるため、高市内閣としては財政健全性を保ちつつ減税効果を持続させる仕組みを講じる必要があります。政府は国と地方の安定財源を確保しつつ、暫定税率廃止までの繋ぎとして補助金を活用する考えを示しています。いずれにせよ、燃料価格対策は即効性が期待できる反面、財政とエネルギー政策のバランスも問われる施策であり、その持続可能な運用が求められています。

「2024年問題」への対応策:物流改革の多角的アプローチ

次に、高市内閣が掲げる物流業界支援策についてです。背景にあるのは、2024年4月から適用されたトラックドライバーの時間外労働規制の強化(年間960時間の上限規制)であり、これによる輸送力不足が懸念される「2024年問題」です。長時間労働に頼ってきた物流業界では、この規制適用によって「モノが運べなくなる」事態、例えば2024年度には輸送能力が約14%不足するとの試算も報じられ、中長距離輸送の停滞やドライバー離職が大きな社会課題となっています。国土交通省の分析では、現時点で深刻な物流麻痺は生じていないものの、構造的な人手不足は解決しておらず、このままでは「2030年にトラック輸送能力が34%不足する」可能性も指摘されています。高市内閣はこうした危機感のもと、物流の持続可能性を高めるための包括的な政策パッケージを推進しています。

荷主規制の強化と取引慣行の是正

2024年問題への対応策の柱の一つが、荷主(発荷主・着荷主)側の協力と責任を促す規制強化です。2024年以降、相次いで関連法令が改正され、長年不公正とされてきた荷主・運送事業者間の取引慣行にメスが入れられました。例えば、2024年施行の「物流関連2法」(改正物流総合効率化法および貨物自動車運送事業法)では、物流効率化が荷主と運送事業者双方の責務と位置付けられ、共同輸送やモーダルシフトの推進が法的に支援されています。これにより、荷主企業も単独でトラック便を仕立てるのではなく、他社との積載の融通や輸送の共同化に努めることが求められるようになりました。加えて、トラック積み下ろし時の長時間の荷待ち・荷役作業がドライバーの拘束時間を延ばす一因となっていることから、荷主側に荷待ち時間短縮の努力義務を負わせるなどの措置も導入されています(※荷主が法令違反の原因となる行為をした場合に是正を促す規定の新設など)。

また、2025年成立の「トラック事業適正化関連法」(いわゆる「新トラック法」)では、運送業界における公正な取引ルールが一段と強化されました。この中には、再委託(下請け)の回数を原則2次までに制限することや、運賃交渉の基礎に運送原価を反映させる「適正原価制度」の法定化といった画期的な仕組みが盛り込まれています。適正原価制度とは、トラック事業者が人件費・燃料費・車両減価償却費など実際のコストをもとに算出した適正な原価を提示し、それに基づいて荷主と運賃交渉を行う制度です。従来は荷主側が市場相場や過去の慣行を踏まえて運賃を決め、運送事業者が価格交渉力を持ちにくい構造でしたが、法制度としてコストに見合った適正運賃を収受できるよう明文化された点が大きな転換です。この制度が機能すれば、「安さの競争」から「持続可能性の競争」へと業界の価値観を変えていくものとして期待されています

このように行政による監督権限を強化しつつも、荷主・元請け・下請けのすべてが適正取引の重要性を共通理解し、自主的に商慣行を見直していくことが肝要とされています。

物流DX推進とモーダルシフトの促進

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も、高市内閣が掲げる物流改革の重要な柱です。限られたドライバーで効率よく輸送力を維持・向上するには、デジタル技術の活用が不可欠だからです。政府はデジタル式運行記録計(デジタコ)の普及義務化や、輸送の見える化を進めるクラウド型運行管理システムの導入支援などを進めています。2024年4月以降、一定規模以上のトラック事業者には電子的な運行記録の保存義務が課され、紙帳票による曖昧な労務管理から脱却しつつあります。また、配車計画の自動化・最適化や、積載率向上のためのマッチングシステム導入も奨励されています。たとえばトラックの積載空間やルート情報を共有するプラットフォームを使い、異なる荷主同士で共同輸送する事例も増えつつあります。政府の物流革新政策パッケージでは、「非効率な商慣習・構造の是正」と「物流の標準化・効率化(DX・GX)の推進」を掲げており、トラック予約受付システムやAIを活用した需要予測による効率配送など、新技術の社会実装が進められています。

同時に、トラック輸送への過度な依存を改め、鉄道や船舶へのモーダルシフトを図る取り組みも強化されています。日本の国内貨物の約9割をトラックが担っている現状を踏まえ、国土交通省は長距離幹線部分は鉄道・内航海運に代替し、トラックは集配など短距離部分に特化する物流ネットワーク構築を目指しています。すでに国交省や経産省の支援策として、鉄道コンテナ輸送の増発や内航RORO船(長距離フェリー)への転移に補助金を出す制度が設けられ、2024年度以降、モーダルシフト関連の予算も拡充されました。24年施行の改正物流効率化法でも、幹線輸送と支線輸送の分離や中継輸送拠点の整備がうたわれ、トラックドライバーの長距離・長時間運転を減らす構造改革が制度面で支えられています。これらの措置は、ドライバーの拘束時間を削減し労働環境を改善する効果が期待されるだけでなく、輸送の脱炭素化にも資するものです。

労働時間規制の見直しと長期的課題への対応

高市首相は物流DXや荷主規制の強化と並行して、「心身の健康維持を前提としつつ労働時間規制の緩和も検討する」と発言しており、必要に応じて2024年問題そのもの──すなわち時間外労働上限規制──の弾力的な運用も視野に入れていることを示唆しました。これは現場のドライバー不足が想定以上に深刻化した場合、例えば一時的な規制猶予や上限枠の拡大措置などを検討する余地を残したものと受け止められています。ただし、長時間労働の是正という改革の大原則を揺るがす緩和策には慎重論も強く、働きやすい物流現場を実現する本来の趣旨を損なわない範囲での議論が必要とされています。高市内閣は労働生産性を高め「稼げる日本」への転換を掲げる中で、物流分野でも労働価値の適正評価と処遇改善を進める方針です。ドライバーの待遇改善策としては、トラックドライバーの処遇を引き上げるための交付金や、中小運送事業者への助成金による賃上げ支援なども検討課題となっています。

さらに長期的視点では、EVトラック導入支援や整備士不足対策など将来の物流基盤強化策も重要です。高市内閣の経済政策にはカーボンニュートラルの推進も含まれており、物流分野でも電気トラック・燃料電池トラックへの転換や、充電インフラ整備、あるいは燃料課税の見直しなど環境と経済の両立を図る政策が求められています。例えば、ディーゼルトラックからEVトラックへの置き換えが進めば燃料費負担は軽減しますが、車両価格の高さや充電時間の問題があります。政府は補助金や減税措置で導入を後押しするとともに、高速道路のサービスエリア等への充電設備整備を進めています。一方で、EV化に対応できる整備士の育成や確保も課題です。大型トラック整備士は高齢化と人手不足が深刻で、車両の高度化に見合う若手人材の育成が急務となっています。国土交通省や業界団体は整備士育成の支援策を講じ始めており、自動車メーカーも自社で整備士養成施設を開設する動きがあります。高市内閣としても、物流インフラを下支えする人材(ドライバー・整備士・物流技術者)の確保策を総合的に検討する方針です。

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政策に対する物流現場の評価と今後の展望

高市内閣の打ち出した一連の政策は、燃料高騰や労働力不足に苦しんできた物流現場から一定の評価と期待をもって受け止められています。燃料高騰への対策については、前述のように運送事業者からは「まさに経営の命綱」として歓迎する声が上がっています。軽油引取税の減税によりトラック1台あたりの月間燃料コストが数万円規模で下がるケースもあり、中小の運送会社ほどその恩恵は大きいと見られます。燃料価格の安定は運送料金の急騰抑制にもつながり、荷主企業や最終消費者にとっても物価高対策としてプラスに働くでしょう。一方で、業界内には「減税はありがたいが、その分の財政負担が将来の増税や社会保障費圧迫に跳ね返らないか注視したい」という冷静な意見もあります。ガソリン・軽油税の減収規模は年間1.5兆円規模とも試算されており、持続的な代替財源の確保とセットで初めて真の安心感に繋がるとの指摘です。

2024年問題への対応策については、「業界の健全化を推し進める内容だ」と前向きに評価する現場の声も聞かれます。長時間労働・低賃金という悪循環から脱却しなければ若い人材が定着しないという危機感は、現場の経営者も共有しています。ある運送会社の幹部は「働きやすい制度整備が進む今、自社でもそれに対応した経営改革を進めていきたい」と述べ、荷主との適正運賃交渉やデジタル化に積極的に取り組む姿勢を示しました。こうした「攻めの投資」を行う企業には、政府も補助金や減税措置で後押しする方針で、実際にIT導入補助やモーダルシフト補助など各種支援策が用意されています。他方で、中小零細の運送事業者ほど人手や資金に余裕がなく、新しい制度への対応に苦慮している実態もあります。例えばデジタコ導入や休憩施設の整備といった取り組みは、即効性がある反面コスト負担でもあります。荷主との取引慣行改善も、一社では限界があり業界全体で取り組む必要があります。物流Gメンによる指導に期待する声が上がる一方、「行政指導がどこまで実効性を持つか見守りたい」という慎重な声も聞かれます。結局のところ、せっかく制定された法律や制度も現場に浸透し実践されなければ絵に描いた餅です。業界関係者からは「法律という器に魂を入れるのはこれからだ。現場を見据えたフォローアップなくして改革は成功しない」との指摘も出ています。

総じて、高市内閣の燃料価格対策と物流支援策は、長年積み残されてきた構造問題に真正面から取り組もうとする姿勢がうかがえるものです。燃料減税は即効性のある救済策、物流法制度改革は将来に向けた体質改善策と言えます。ただ、実効性を持たせるにはスピード感と継続的な実行力が肝心です。経済安全保障の観点からも物流ネットワークの安定は不可欠であり、現場の声に丁寧に耳を傾けつつ政策をアップデートしていくことが求められています。今後、高市内閣が政治のリーダーシップでこれらの施策をどこまで実現し定着させられるか──その動向を業界関係者のみならず国民全体が注視しています。安易な楽観も過度な悲観も避け、現実に即したきめ細かな対応を積み上げることで、日本の物流が直面する危機を乗り越え、より持続可能で強靭なサービス産業へと変革していくことが期待されます。

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